どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


彼にゆっくり手を伸ばす。

ああ、触れた。

触れられた。

やっとまた近づけたんだね。


流れ込む感情はすべて涙に変わり、

私の視界をぼやけさせた。


「すきだ、」


「私もだよ……」


お互い涙を流して告白する私たちに

会場から拍手が沸き起こった。


「心、何かを守るのに

失う覚悟がなきゃダメだよな。」


「え……?」


それはマイクには拾われない声の大きさだった。


「弱かったんだ、何も失いたくないから

けっきょく何も守れなかった」


星野くんはぎゅっと私の手を握る。


「もう一度、チャンスを下さい」










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