どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


手をフリかざされてぎゅっと目をつぶる。

すると

パシンーー


佐野くんはその手を取って低い声で言った。


「心ちゃんに手出すな

俺なら、いい。だけど関係ない人に暴力するなんておかしいだろ」


それはいつもの佐野くんの声とはまるで別物で少し怖くなってしまう。

女子もその声にビックリしたのか


「もういいわよ!」

そう言葉を残して去ってしまった。


シーンと静かになったこの場所で佐野くんは言った。


「ごめんなぁ、巻き込んじゃって」


「ううん、それより大丈夫?」


「うん、平気」


ハンカチを取り出して水に濡らし、佐野くんに渡す。

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