どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて


「これ、使って」

私がそう言うと佐野くんは少し切な気に言った。


「心ちゃんってこんな俺にも優しいのな~

最低って言われるのも分かってるんだ

付き合ってはふって、付き合ってはふってって繰り返してるのも事実だし


好きになれるかなっとか思って付き合うけど

実際俺も、初恋とかまだなのかもなあ~」


初めて聞いた佐野くんの本音。

たくさんの人と付き合ってる人が恋を知ってるとは限らないんだ。


でもね。


「佐野くんは佐野くんでいいと思うな」


「え?」


「優しいよ、元気だし、一緒にいて楽しい!

佐野くんは佐野くんらしく探していけばいいじゃんっ!」


いつも元気な彼は絶対に誰かに元気を与えてる。


そんな彼が少し悲しそうな顔をするのをみたくない。

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