どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
低い声が先生に向けられると先生は言った。
「宿題を見せてもらうのはよくない。貸す方も貸す方だ」
私、たぶん数学の先生に好かれてないんだと思う。
何も言えなくて、うつむいていると星野くんはもう一度イスを引きながら言った。
「俺が無理やり取ったんっす。
すいませんでした」
え……っ。
無理やりなんて取られてないのに
もしかして、私のことかばって……?
「まぁ、いいが2人は今日の放課後数学教科室に来なさい」
けっきょく罰を与えられたものの
みんなの前でこっぴどく怒られずに済んで授業は進んだ。
チラリと星野くんを見てうしろ姿にありがとうと言う。
後で言えばいいのだけれど、何か今無性に伝えたくなった。
伝わらないんだけどね。
そしてしばらくすると授業は終わった。