クピドの窒息
 


そんなことできっこないと、とうにわかっているくせに。


「……ユウキは、私とは寝ないよ、絶対」

声が震えるのは、まだ諦めきれていないからだろうか。
それとも坂田みたいに、狡くなりきれないからだろうか。


「本当に好きな人とじゃないと駄目なの。誰とでもいい、あんたみたいな奴とは違うの」


堕ちないよ、ユウキは。
彼はきれいだから。
腹いせに私を抱くようなあんたとは違う。惰性で抱かれるような私とは違う。
健全で、清らかな人だから。

汚しちゃいけない。

私には、できない。


自分のカッターシャツを着直して、スカートを履き、臙脂のリボンを襟元につける。
そんな私の後ろで、心外だ、と坂田が笑った。


 
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