クピドの窒息
 


「別に誰でもはよくねえよ」

「ああ、ブスとデブとバカは無理なんだっけ?」

そういえば前にもしたよね、同じような会話。
どうでもいいことだけど。


本当に、どうでもいいことだ。
何もかも。

喧嘩したなら、また仲直りすればいいじゃない。
どうしても気まずくなるなら、別れればいいじゃない。

きみはよく相談してくるけれど、恋愛ってさあ、結局私には向いてないと思うのよ。
特に、きみたちみたいにキラキラ眩しい純粋な恋愛は。


(だって私、そんなきれいな恋、したことないもの)


最後に紺色ソックスを履いて、空っぽの鞄を肩に掛ける。
いつかユウキが誕生日にくれた、薄汚れたクマのキーホルダーがだらしなく揺れた。


 
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