ジュエリーボックス
「もう俺らも高校生だもんな」
「月日が経つのは早いねー」
「本当にな」
「…進路とかもそのうち考え出さなきゃね」
いつか、今みたいに四人で居れなくなる日がやってくる。
…寂しい、な。
そう思うと、胸の辺りが締め付けられる。
(なんで今からそんな事考えてるんだろう…まだ入学したばっかりだし、高校生活これからなのに)
…後から思えば、これが予感だったのかもしれない。
"この四人は離ればなれになる"って、漠然と思った。
「俺、高校卒業したら東京に出たいんだ!」
「あたしは北海道に行きたい大学があって」
悠介と美月は、進学希望組だろうなって気づいてた。
頭も良いし、なんだかんだでテストも毎回良い点数の二人だから。
私は、努めて明るい声で言う。
「私は高校卒業したら就職するけどね。これからバイトも探さなきゃ!」
続いて、俺も就職組、と告げた頼人。
私と頼人の家は母子家庭で、それぞれが金銭的にも余裕がないっていうのはお互いに知ってる。
悠介と美月の家は両親が揃っていて家も立派だし…、なんて、普段は全く考えない。
でも、これからの進学以降の人生は家庭環境が左右するところも大きくて。
特別勉強が好きな訳でも進学を熱望する訳でもないけど…ほんのちょっとだけ、両親が揃っている家庭を持つ人達を羨ましく思う日もある。