ジュエリーボックス


戸野先輩は去年から副会長をしていたから尚更知名度があり、この辺りでは垢抜けた有名人。

湯浅先輩も同じく生徒会の役員二年目で、たまに戸野先輩のバンドに呼ばれてサポートメンバーとしてキーボードを弾いているらしい。

…そして、新任紹介での私達。

マイクを渡されて名前を言うのが精一杯かと思いきや、四人で壇上に上ったもんだから調子に乗ってしまって。

公衆の面前での私と頼人のバトルっぷり(私の(俺の)方が面白いんだという無駄なアピールタイム)が災いして…まさかの、校内中の噂の的に。


…結果、

1年1組には見物客が絶えなくなってしまった。


「棋士くんってイケメンだよねー!」

「如月さんモデルさんみたーい!今年の生徒会はレベルが高いね!」


「同じ中学の人の中では結構有名なんだよー?あの四人、"チーム宇宙"とか言っちゃって」

「あ、喧嘩してた二人だ!」

「あの二人見てみんな朝から爆笑してたよね!」


廊下からも、教室内からも注がれる好奇の視線。

…完全に、頼人が一発芸をしたのが災いしたのと、万が一と忍ばせておいたハリセンを私が出してしまったのが問題だった。


「悠介と美月は慣れてるだろうけど…俺とバカ眼留までこんな風評被害に遭うなんて」

「…私達が生徒会なんて世も末だよね」

「いや、まあ実は俺は政治家からスカウト受けてもおかしくないぐらいの大人物だけどな」

「調子に乗るなよこの馬鹿が」


上着の内ポケットに隠し持っていたオモチャの小型ハンマーで、ぴこ、と頼人の頭を叩くと周りからどっと笑いが起きる。

…私、こんな事したい訳でもないんだけどね。

内心、苦い顔をしながら呟く。

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