ジュエリーボックス
「…あれ、悠介?」
私達がバイトを探している途中、トイレから戻った様子の悠介が素通りして自分の席に着いた。頭を抱えて机に伏せている。
心配になって、近づいて声を掛けてみた。
「悠介、どうしたの?具合悪い?」
声を掛けても、顔を上げない。
ギャラリーの面々も、悠介のファンの女の子達も遠巻きに心配そうに見つめている。
剰りにも動かないので、手に持ったオモチャハンマーで、ぴこ、と伏せた悠介の頭を叩いてみた。
…ゆっくりと顔を上げて発せられた悠介の言葉と態度に、私は固まる。
「……眼留…、ちゃん?」
「…!?」
…"ちゃん"!?
強烈な鳥肌が立つのと同時に、本能的に、これはいつもの悠介ではない、と悟る。
普段と剰りにも違う悠介に周囲のざわめきも一層大きくなった。
「おい、どうした?」
「頼人!悠介が…なんかおかしいんだけど!」
「…あ、藍川、くん…?」
驚いた。頼人を名字で呼ぶなんて尋常ではない事。本人もびっくりしたらしく、どうしたお前!と頼人が悠介を揺さぶる。
"彼"の脂汗が尋常じゃないくらいに噴き出すのを見た。
どう見ても、様子がおかしい。頼人と顔を見合わせる。
…まさか。
「「うつ病!?」」
見事に頼人と声が被る。違う、と弱々しく首を振る悠介。
じゃあなにがあった、と詰め寄る私達の背後から、聞き覚えのありすぎる声がした。
「…二人同時に言うなよ、"俺"が一番びびってる」