ジュエリーボックス
「…先輩、"別次元"から帰って来たんだって。今いるのが"本来の"戸野先輩らしいよ」
「は…?」
美月まで意味不明な事を言い始めた。本来って…まるで今まで存在していたのは偽物だと言わんばかりの言葉。
訳が解らなくて首を傾げる私、…と頼人。
「…俺だって信じられねぇよ、自分が二人なんて」
「戸野先輩が変な話するから、夢でも見たんですよって話したばっかりだったんだよ!」
困惑する悠介と、興奮気味に話す美月。
その時、チャイムが鳴った。昼休み後の休憩が後五分である事を時計が告げていた。
ちょっと来て、と戸野先輩が私達を会議室へと連れ込んだ。いつも生徒会の打ち合わせをやっている場所だ。
…戸野先輩が話す内容は、驚愕の連続だった。
「みんなは"反地球"って言葉、聞いた事ある?」
「反地球…?」
「宇宙にある、もうひとつの地球の事です」
「な、なんですか、その話」
宇宙について興味がある私達は、不思議なその話に直ぐに食いついた。
話によると──時空の歪みによって、"反地球"とこの地球を行ったり来たり、という人間が出て来ているらしい。
「…な、なにそれ」
「オカルト!?」
「宇宙人襲来か!?」
口々に好き勝手な感想や予測が飛び交う中、今回の悠介の事件の真相を聞いた。
「同じ人間が同じ次元に二人存在するなんて前代未聞です…信じられない」
戸野先輩も元々宇宙に興味があったけど、反地球というものには半信半疑。
…というのも、反地球というのは、過去の学者達が推測した、という程度に留まる「架空の惑星」だそうだ。