ジュエリーボックス
「眼留ちゃん、強いね…」
「ちょっと悠介、気持ち悪いから"ちゃん付け"やめてくんない?」
「同じ俺とは信じがたいよな」
こんな経験二度とねぇかもしれないから、と言って、自分で自分をまじまじと見ている悠介。
俺にいじめられてるってマジ?と頼人が詰め寄ると、彼は目を泳がせて頷き、小さな声で肯定をした。
「しゃ、舎弟になれ、って…脅されて」
「…見た目は同じなのにまるで違ぇな、性格が」
普段の悠介との剰りの違いに驚くばかり。本人には悪いけど、こんなに頼り甲斐がない悠介はちょっと嫌だな…と思ってしまった。
美月が、興味津々に訊ねる。
「あたしもいるのかなー?」
「みんないるって…思えないよね」
「思えなくても、ちゃんといますよ」
…戸野先輩の話は信じがたいけど、論より証拠。悠介が二人いるのを見ると、きっと事実なのだと思う。
恐ろしいというか面白いというか…まだまだこの世には常識では説明のつかない事が山積みなのかもしれない、と思う。
「俺…屋上にいて、イチゴオレ飲んでる最中に、気づいたらここにいたから…イチゴオレ飲んだら帰れるかもって思って」
「髄分イチゴオレにこだわる奴だな」
「三点」
「いて、お前…なんで俺を叩くんだよ!」
「アンタ叩かれ役だから」
ぴこり、と頼人の頭を軽く叩きながら思う。
オモチャハンマーだけじゃなく、もっとツッコミ道具が必要かもしれない、と。