ジュエリーボックス
「あっちの世界の藍川くん…すっごい不良なんだよ、いつも独りでいるし」
「ま…マジ…!?孤独を愛する男なのか、俺は」
更なる大衝撃。
頼人は、どちらかというと独りでいるよりも仲間といた方がいい、ってタイプのはずなのに。
悠介から話を聞いて、本当にこの世界と反地球は個々の性質が真反対なのだと知る。
「凄ぇな、反地球…頼人が不良って想像つかないけど」
「藍川くんモテるよ…バンドのボーカルやってるしね」
「は!?別世界で歌ってんの、俺…?」
「俺と湯浅さんと同じロックバンドに所属していますよ、あっちの頼人くんは」
…嘘みたいな事が次々に告げられる。
まるでこの地球と状況が違うって…面白いけど、どういう事かさっぱり解らない。
…頭の中がこんがらがってきた。…さっきの情報。頼人と美月が付き合ってる、というのも。
(…この世界でも、頼人は美月が好きなんだろうな)
反地球でも、この世界でも。
…近いうちに、二人は付き合うかもしれない。
有り得ない事態の中、ぼんやりと授業を聞きながら自分の気持ちを考える。
…心臓がずきりと痛んだ。
(反地球がもし本当にあるとしたら…私はどんな自分だろう)
美月との関係は良くないらしいし、頼人や悠介と幼なじみの割に剰り話さないらしい。
あっちの世界の私を見てみたいような、見てみたくないような…好奇心と恐怖と自己嫌悪が入り交じった気持ちになる。
…でも私は、戸野さん逹の話を聞いて不思議な感覚を覚えていた。
(──私…"別の世界"を知ってる気がする)
ただ、漠然と。
でも確かに、そう思っていた。