ジュエリーボックス
「眼留、もう時間?」
「あ、お母さん寝てていいよ、いってきます」
夜勤明けで疲れているお母さんに手を振って家を出る。離婚してから女手一つでここまで育てて貰った。
父親は今、何処で何をしているのかすら知らないし、最近では知りたくないとさえ考えるようになった。
冷たく、固く閉ざされている心の扉。
私は、二度と開くつもりもない。
今日の夕方、初めてのバイトの面接がある。
生徒会の仕事も頑張りたいけど生活面も支えなくちゃな、と思う。
「おはよ!」
いつも通りの朝。悠介と美月と頼人と私、四人での登校は日々の日課だ。
眠そうに目を擦る美月が、手櫛で寝癖を整えているのを横目に、悠介は盛大な欠伸をした。
「…あれ、頼人は?」
「なんか今朝はもう先行ったんだって。おばさんが言ってた」
「…え、あんなに寝坊し放題な頼人が!?」
「珍しすぎるよな…こんなの、初じゃねぇ?」
「季節外れの雪でも降るかもねー」
普段は一番ギリギリに出て来るはずのアイツが一番早く登校するという暴挙。
こんな事は多分…小学校のアルミ缶回収係の時以来だ、と馳せる。