ジュエリーボックス


「「なんか、違和感…」」


…声が被った。互いに目の前の人物をまじまじと観察する。

頼人が腕捲りをすると、じゃらり、とアクセサリーが音を立てた。


「普段の眼留じゃねぇみてー」

「…私もそう思うんだけど」


普段と、空気が違う。確かに頼人なのに、不思議と雰囲気が別人に見える。

不審に感じながら首を傾げるも、問い質す。


「ねえ。今日、何で先に来た訳?美月達も心配してたよ」

「…あの女しつけぇからいいんだよ。お前だって最近俺の事避けてんだろ」


立ち上がって怪訝そうな顔で髪を掻き上げる頼人。

カラーコンタクトを入れているのか、少しブラウン掛かった瞳が揺れる。


(…コイツ、普段からこんなに色気づいてたっけ?)


いつもの頼人は、制服を第一ボタンまで閉めるような変に真面目な奴なのに。

剰りにも不可解だ。


「お前、俺と付き合う気になった訳?」

「…は?」

「好きだっつったろ」


意味不明な事を告げる頼人。その目は真剣そのもので、少し照れているのか横を向いたままぼそぼそと呟かれる。

呆気に取られて、固まる私。何故か瞬時に美月の顔が浮かび、訊ねる。


「美月と、付き合うんじゃ…?」

「…お前まで勘違いしてんのかよ、アイツは中学の時の元カノ。ずっと前に別れてる」


──…中学の時、なんて全く気づかなかった。というか、私の知らないところで付き合ってたなんて、大ショックだ。

そして湧き上がる、疑問。


(…コイツ、本当に頼人だよね…?)



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