ジュエリーボックス
「…俺の事、どう思ってんだよ」
「な、何が…?」
「言っとくけど俺ら"Tripper"のメンバーは恋愛禁止じゃねぇからな、戸野も深雪先輩も普通に付き合ってるし」
「え、湯浅先輩って戸野先輩と付き合ってたの?」
美男美女でお似合い、と目を輝かせる私。
次の瞬間、Tripperって何?、と訊ねると、頼人は呆れた様子で言った。
「お前…やっぱりおかしいだろ、記憶障害?」
「あのね…私だってアンタがおかしいから困惑してんの!頼人はバンドのボーカルなんてやってないし!」
「何意味不明な事言ってんだよ…中学の時からお前だってよくライブ見に来てただろ、最近は来なくなったけど」
頼人に聞いたところ、"Tripper"というのはバンドの名前らしく、この地元では結構ファンもいるらしい。
今度都内のライブハウスでワンマンライブが決まったと聞いて、おめでとう、と曖昧にエールを送った。
(何これ…"私達の世界"とまるで違う)
話を聞けば聞く程に、疑う余地がなくなっていく。弱々しい悠介も、目の前の頼人も──きっと"反地球"の人物なのだろうと感じる。
これが事実ならばもの凄く非科学的な事なのに、私の頭は割と冷静だった。
「「…今思ったけど」」
また、言葉が被る。"目の前の頼人"とは、どうもシンクロ率が高いようだ。
気不味そうに視線を反らす癖は、確かに本人なのに。
「まさか戸野が言ってた…、あれか?」
「…あれ、って」
「地球が二つあるっていう…夢みてーな話」