ジュエリーボックス
…やっぱり、同じ事を考えてた。剰りにも不自然な頼人を改めて見ると制服の着こなし方も全然違う。
ブレザーの下にピンクのカーディガンを着ている様子が新鮮だ。
「"私の世界の頼人は"ピンクなんて絶対着ないよ」
反地球の事を言う代わりに、そう返した。頼人は無言でポケットからタブレットケースを取り出す。
──…それは、コーラ味のガムだった。
「あ…それ、」
「なんだよ…食いてーか?」
「…ううん、私レモン味持ってるから」
確か、この前の残りがあったはず…。ポケットを漁って、気づいた。
…"あっちの頼人"にあげたんだった。
『なぁなんでお前レモン味買ったの、コーラ味の方が美味いじゃん』──
この前そんな事を言ってたと思ったら…ちゃっかりコーラ味を食べてるなんて。
何だか面白くなって笑うと、目の前の男は渋い顔でガムの風船を膨らませた。
「なに笑ってんだよ」
「好みは同じなんだなーって思って」
変な奴、と頼人が呟いて気づく。…授業、とっくに始まってる。
話に夢中で、チャイムの音も聴こえなかった。
「いつもサボってんの?」
「…たまに」
「この不良」
「いや、案外真面目だって、俺。お前が一番よく知ってんだろ」
うん、と頷きそうになって、ふと違和感に気づく。
…私、思ったより"コイツ"と普通に話せてる。