ジュエリーボックス


私もしゃがみ込み、フェンスを背凭れにしてアスファルトに座る。

ぱちん、とガムの風船を舌で弾いた頼人が訊ねた。


「…なー、別の世界の俺って、どんな奴」


一瞬考えあぐねて、いつも私と喧嘩してる、と答える。

でも美月と悠介と四人で仲良しだよ、と続けると、なんとも複雑そうな顔をした。


「…そっか」

「私、美月と仲悪いって本当?」

「誰に聞いた?」

「なんか弱い悠介」


ああ、と納得した表情で頷いた頼人が、アイツはうちのバンドのベーシストだから、と告げた。一瞬、驚く。


「え、悠介、アンタにいじめられてるって言って怯えてたよ!?」

「あー、愛のあるいじめだから。アイツこの前のライブから加入したばっかりだし」


反応が面白いからつい、舎弟になれよっつったらびびっちまって。

…そう言った頼人は、やっぱり見慣れない。私の世界では、二人は大親友なのに。



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