ジュエリーボックス


「おい!眼留…"俺"に何してくれてやがんだよ!」

「もう一人のあんたが催促して来たんだからしょうがないでしょうが!」

「…お前」

「うおッ…!」


頼人二人が向かい合う。顔は同じなのに…雰囲気も性格も制服の着こなし方も違う。

だけど、私から見るとまるで双子。仕種や特徴はそっくりだ。

頼人が自分に対してびびっているのが見えて、少し笑える。

次の瞬間に告げられた台詞に私は固まった。


「お前さ、こいつは俺の女だから、金輪際触んな」

「…は…!?」

「もう一人の俺であっても、眼留は俺"だけ"のもんだから」

「…ちょっ…!?」

「あと、"俺の女"に対してブスとか言ったら殺す」


反地球の頼人は独占欲が強い。そして何故か私に対して好意があるらしい。

突然のもう一人の自分からの言葉に、頼人は絶句している。

…そういえば。先程の頼人の台詞が頭の中に蘇る。


──『キスなんかいつもしてんだろ』


その意味を考えると恐ろしい。…付き合ってもいないのにキスをするなんて、こっちの世界の私はとんでもない女なのではないのだろうか。

悪い想像が次々に先走って、泣きそうになってしまう。


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