ジュエリーボックス
ex-5.異質と遺失
反地球に来てから、私は教室に入る前に保健室へと連れて来られた。
保険医の先生もいないから、とても静かだ。白いベッドに横になりながら目を閉じる。
(教室の様子見たかったのに…私もこの世界に二人いるのかな)
天井も壁も、空だって同じなのに──世界が違う。
不思議な感じが身体中を包んでいるのに、気持ちに不安はない。
「…おい、起きてるか?」
閉められた薄いカーテンの横から、聞き慣れた声がする。頼人も保健室にと連れて来られた。
悠介ともうひとりの頼人は授業を受けている。
「起きてるけど、なに」
「…いや、俺逹、放課後までここにいなきゃいけねぇんかな」
「…お腹空くよね、流石に」
まだ二限目だというのに、既にお腹の虫がぐるる、と啼いている。笑う気配がした。
「お前…相変わらず食い意地張ってんな」
「うっさい、気が抜けたからお腹空いちゃったんだよ!」
カーテンが僅かに開けられて、ほら、と差し出されたのは…コーラ味のガム。
隣にいるのは──"反地球の不良っぽい頼人"のほうだった。
「…違うほうの頼人かと思ってた」
「俺で残念?」
「…そんな事、ないけど」
ありがとう、とお礼を告げてガムを口に入れる。間抜けなほうの頼人は今頃、教室で授業を受けてるんだろう。
(…もしかして、美月がいるから授業を受けたかった?)
そう考えると少しだけ、胸が苦しくなった。