ジュエリーボックス
「美月…あの、」
「呼び捨てで呼ばないでくれない?」
「…え…?」
「あなたを見てると吐き気がするの、眼留さん」
態度が急変。
美月は心底私が憎い、というような視線を向ける。
私の世界の明るくて優しい、天然ボケな彼女はここにはいない。
…この美月は、まるで別人だ。解った上で告げてみた。
「私とアナタ、親友なんですけど」
「"親友"?ばっかじゃないの?私、愛瀬眼留っていう女が大っ嫌いだから」
…結構ショックだ。
美月と同じ顔で、同じ声でこんな事言われるなんて。思わず放心状態になる。
「お前、最低な女だな」
「ふふ、ありがと。頼人に言われるとなんでも嬉しいよ?」
…美月が、美月じゃない。こんなにも違うなんて。
『眼留、どうしたの?元気ないじゃん』
…いつもの美月の顔が浮かんで、涙が出て来た。眩しい笑顔が思い返される。
(…私の世界の美月も本当は私が嫌いだったりして)
要らない事まで考えてしまって、疑心暗鬼に陥る。
…早く元の世界の美月に会いたい。いくら反対の世界といっても、こんなに性格の違う彼女を見たくはなかった。