ジュエリーボックス


流石はバンドマンなだけあって、こっちの世界の頼人は人気がある。

私逹の世界同様に、悠介は安定のモテっぷりなようだ。カレーを食べながら悔しがる頼人。


「くっそ…こっちの俺、ハーレムだな」

「アンタもバンドやればいいじゃん、そういえばカラオケ巧いしね」

「いや、俺はバイトも生徒会もあるからいいんだよ、平坦な道で!」


…コイツは堅実派。

バンドやってる方の頼人とは対照的…かと思いきや意外と頑張り屋な事が判明。


「スタジオ代とか金掛かるから、最近内緒で深夜バイトしてんだよ俺」

「へー、何のバイト?」

「年齢誤魔化して、ラブホの受付」

「……、そう」


バンドの為に偉いね、と言おうとして微妙な台詞なので飲み込んだ。

隣でもう一人の頼人が、この不良!とか騒ぎ立てる中、悠介が、お前やるじゃん、と感心していた。


「…それにしても、私逹いつ戻れるんだろうね」

「悠介は今回は上手い具合に相互トリップ出来たみたいだから今この世界にひとりだけど…問題は俺と眼留だな」

「お前らこの世界に適応しすぎだから。俺もだけど」

「悠介が一番楽しんでんじゃねーか!」


いつも通りの会話をしていると、お前らマジで仲いいんだな、と不良の頼人が言う。

背後から、藍川くんが学食来るなんて珍しいね、と囁き声が多々聞こえた。

(…そういえば、弱々しい悠介が私逹の世界に来た時に『こっちの世界の頼人はいつも独りでいる』って言ってたっけ…)

そんな事を考えていると、誰かと昼飯食うのは久しぶりだ、と目の前の頼人がぼそりと言った。



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