ジュエリーボックス


学食を後にして、教室を覗きに行く。

軽やかな足取りの私とは反対に、気不味そうに、お前が思うよりも事態は深刻だぞ、と二人の頼人が言った。

意味が解らなくて、首を傾げる。


「世界はひとつじゃないのかもしれないって、お前を見て思ったのが始まりだった」

「…どういう意味?」

「時空を歪ませてる原因が何なのかっていう話」


あれを見ろ、と悠介が指差す方向には、教室の隅に掛けられたカレンダー。

印字された日付を見て驚く。

…2015年5月。今は2013年のはずなのに、と思考を巡らせた後に気づく。咄嗟に教室のプレートを見ると「3年2組」の表示。


「…俺ら、二年後の世界にトリップしちまったみてぇなんだよ。戸野先輩も湯浅先輩も卒業しちまっていねーし…時空の歪みでどんどん互いの世界の差が生まれちまってるんじゃねぇかって」

「世界の、差…?」

「時空の歪みによって"反地球"の"いつの時代"にトリップするかは解らない。…もしかして、俺らが行き来を繰り返すうちに自分達の運命を変えちまってんじゃないか?」


…なんとなく、頼人と悠介の言っている意味が解った。

"二つの世界"は本来ならば並行していなければいけないのに、狂ってしまっている。

互いの世界の均衡が崩れて、過去を変えれば未来も変わってしまう。

私達の立場も性格も違ってしまったのは環境のせいではなく…もしかしたら、時空の歪みのせいなのかもしれない。


瞼を伏せて思い返す。私の世界、そして"この世界"の事を──


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