ジュエリーボックス












「……──眼留!どうしたの、ぼーっとして!」

「…、え…?」


気づいたら、教室。

少しぐらぐらする頭を擦りながらブレる視界を落ち着ける。

目の前には、にこやかな表情の美月。

廊下に出て、プレートを確認。

「1年1組」の文字。

もう一度、どうしたの、と掛けられた声は、困惑した様子ながらも優しいものだった。


「ね…今、何年だっけ…?」

「…ん?2013年でしょ、眼留、最近元気ないけどなんかあった?」


教室のカレンダーを確認。

五月。

机の上にあった美月の携帯の日付を見ると、2013年5月29日。

…帰って来た。そう思ったら、一気に脱力した。


「…っ…、良かった…美月ー!私の親友!」

「わっ…ちょっと、眼留!苦しいよ!」


涙目で美月に抱き着く。…私の親友の美月だ、良かった。

平和な世界に戻って来た。

背後から、暑苦しい事やってんなー、と笑う気配がする。

振り向くと、頼人と悠介。

一緒に戻って来れたのだと思い、小声で訊ねる。


「あんた達も帰って来れたんだね、良かった。それにしても"あっちの世界"からなんで戻れたんだと思う?」

「は?あっちの世界…?」


お前まだ寝惚けてんのか、と額にデコピンを食らう。

続いて、今朝頼人が早く登校したりするからだよ、なんていう悠介から発せられる会話。

なんだか二人共、まるで"反地球"の事を知らない口ぶりだ。


「なんで今日に限って早く登校した訳?」

「いや、なんか早く目が覚めちまって…俺もたまにはひとりになりたい日もあるんだよ」


…"今朝"、私が屋上まで頼人を迎えに行ったのだろうか?

頼人を見つめる美月の視線が何処か今までと違う気がして、はっとさせられる。


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