ジュエリーボックス
ex-6.告白
紡がれた言葉に私は耳を疑った。
息を切らしながら走って来た三年生の教室の並ぶ廊下。
早口で内容を伝えた私に、戸野先輩は少し困ったような、それでいて楽しそうな声色で告げた。
「反地球…、って…愛瀬さんってそういうの信じる人だったんだ?面白いですね」
俺も宇宙の話には興味があるんですけど、なんて何気ないように言う。
真っ青になっていく心境に、今頃になって震えが来た。
今度頼人くん達とライブ見に来ませんか、と誘われる。反地球の頼人の姿が脳裏に蘇った。
ああ、そうそう、と戸野先輩が続ける。
「うちのバンドのボーカルの脱退が決まって、次がラストライブなんですよ。新しいボーカルを探しているんですが、愛瀬さんの周りで歌が上手い人知りませんか?」
「…え、歌、ですか…?」
戸野先輩の台詞に悪寒が走った。反地球で戸野先輩のバンドのボーカルは、頼人だったと聞いた。
…少しずつ、運命が傾き始めている気がした。
言葉に詰まっていると、予令が鳴る。じゃあまた生徒会で、と言った後、また相談に乗りますよ、と笑顔で先輩は教室へと戻って行った。
(…なんでみんな知らないの、別の世界に行っていたのは私だけ…?)
ポケットの中のガムの感触を確かめながら立ち尽くす中で、言い知れぬ恐怖が襲ってきた。
自分の中のなにかが、気づけ気づけと騒ぎ立てている気がしてならないのだった。