ジュエリーボックス
その後も私が反地球についての概容を説明するも、美月達は首を傾げるばかり。
弱々しい悠介。キツい性格の美月。孤独を好む頼人──…彼らは今も、何処かに存在しているのだろうか?
「普通に考えて同じ人間が二人なんてあり得ないだろ、よっぽどリアルな夢見たんだな」
笑って言う頼人。…そう、夢にしてしまえばいい事だ。
包みを開けられないままのガムはまだポケットにあった。こんな小さな事は証拠にもならない。
遂に意を決し、包装紙を剥いて口の中に放り込む。コーラ独特の酸味がした。
これで、唯一の"反地球"の証拠は消えた。
それから数日。
私は週に二回程度のバイトを始めた。
生徒会の仕事もあるせいで、私達四人は個別行動も増えてきた。
あれからというもの、全く異変はない。
やっぱり夢だったのかもしれない、と思い始めた時、美月が放った言葉が少しだけ引っ掛かった。
「この前のカラオケ楽しかったね!」
「頼人、歌巧ぇよな。戸野先輩にも褒められてたじゃん」
よせよ、と照れた様子の頼人。
把握出来ていないカラオケの話を聞くと、戸野先輩と悠介と頼人と美月の四人で行ったらしい。
眼留はバイトだって言ってたからさ、ごめんね、と美月が悪びれない笑顔で言う。
…その笑顔に、少しだけ違和感。
それは、別の世界の美月が見せた造り笑顔に似て見えたからだ。
直ぐに考えを打ち消し、いいんだよ、楽しかったならよかったね、と言葉を反らす。
心臓の動悸が、不穏なリズムを奏で始めたのを感じながら。