ジュエリーボックス
ex-2.劣等感と自己
入学式から約二週間が経過した。時の流れはあっという間だ。
私、というか私逹は部活に入る気も全くない。
入学前に「みんなで帰宅部になろうね」って美月と約束をしたから。
学校から帰っての自由時間。このひとときが、結構好き。
少し大人びたファッション雑誌を手に、ベッドの上に寝そべる。
(髪、伸ばしてみようかな)
指でショートボブの髪先を摘まみ、手鏡の中の自分を見つめる。
中性的な顔立ちの私は、どちらかというとパンツスタイルが多く、スカートは剰り履かない。
(…少しは、女の子らしくしてみる、とか)
考えた後に眉を寄せ、雑誌を放り投げた。
「…やめた、私らしくもない」
ベッドの上でゴロつきながら、思いきり伸びをする。
『──春は出逢いの季節!』
『恋を始めてみよう』
そんなキャッチコピーを目にして、溜め息ばかりが漏れる。
彼氏なんて、今まで縁がない。
クラスの女の子逹が彼氏について言っている相談事を聞く専門だ。
(そういえば美月はなんで彼氏作らないんだろう…あんなに美人で可愛いのに。私が男だったら良かった!)
…そんな事まで考えてしまって、撃沈。私は完全に"オス化"しているようだ。