ジュエリーボックス
クローゼットから厚地のニットカーディガンを引っ張り出して、羽織る。
部屋のエアコンの電源を入れて、暖まって来たところで漸く落ち着いた。
悠介が、こんな真冬に半袖着てる奴がいるか、と頭を小突かれる。
…冬?
テレビから流れるのは、クリスマスや正月の話題ばかり。
アナウンサーが言った、もう年の瀬なんて早いですね、という台詞が頭の中をぐるぐると回っていた。
「悠介…、私…」
「なんか元気ねぇみてぇだからさ、お前。今日も、話し掛けても上の空の時あるし」
「……ごめん」
「俺らもバンドの練習で忙しいから一緒にいられねぇ事も増えてきたけどさ…美月とは仲直りしろよな」
…バンド?仲直り?
状況がよく飲み込めない。
テレビの画面に、"2014年まで後10日"と表示されていた。
状況が、なんとなく理解出来てくる。
…私はまた、未来にトリップしたのだ。
ふと、ひとつの考えが頭を過る。
ここは"反地球"なのだろうか、それとも私のいた世界の延長か、それとも更に別の次元なのだろうか?
…きっと、誰に聞いても解らない。
直感で、そう悟る。