ジュエリーボックス
「うー…っ…」
「…親父も笑ってんぞ、眼留が泣きすぎだから」
「おじさんは…そんな事しない!」
「意味わかんねー…お前、目真っ赤」
切なそうに笑った横顔に、どきりとした。
この日の笑顔が一番、好きだと思った。
…"この時の頼人"に、私は会いたくて堪らなかったんだ。
「ありがとな、俺は泣く訳にはいかねーから」
俯いて呟いて、上着の内ポケットから何かを取り出す。
ぽつぽつと、少し小降りになった細い雨が柔らかく地面を濡らしていた。
「…子供みたいな味が好きだよね、コーラなんて。飲むコーラはそんなに好きじゃない癖に、変なの」
「俺、見た目よりガキだから」
「見た目通りじゃん…いたっ!」
「お前、口が悪いんだよ」
俺は案外お前に対して優しいからな、と頼人は言う。
お前だけには優しいからな、と、訂正するように言い直す。
私は、笑う。
涙はもう出なかった。
暫く話し込んでいるうちに雨が止んで、太陽が覗いていた。
人の生命は、現実にも過去にも遺っていく。
時間の中に、想い出の中に生きた証がある。
優しさも、笑顔も、温もりも。
想いは、宝物だ。