ジュエリーボックス
「──…あ、起きた!」
目が覚めたら、病院のベッドの上にいた。目の前には湯浅先輩と、戸野先輩。
「…あれ、私…?」
「まだ起きちゃ駄目、三日間も意識不明だったんだから!」
「三日…?」
「階段から落ちるなんて…全く間が抜けてるんだから!」
「…え、そうなんだ…ごめんなさい」
巻かれた包帯の上から頭をさすりながら笑って見せる。
…けど。
──…階段?
全く記憶にない。
なんだか、凄く違和感を感じる。…これは、"自分自身"に?
考えてみても、よく解らなかった。
…内容は忘れてしまったけど、随分、懐かしい夢を視ていた気がする。
幸せな、夢を。
「眼留ちゃん!よかった…!」
花瓶の水を取り替えた様子の悠介が泣きそうな顔で病室に入って来た。
「悠介、ずっと心配してたのよ、眼留の事」
「いつもは泣き上戸な癖に我慢しちゃってなー、こいつ」
「戸野さん…!もう…、眼留ちゃんの前で、やめてくださいよ」
目が覚めた時に少しだけ感じた違和感は、なんだというのだろう。
"この世界はおかしい"
そう思ってしまったのは、どうしてなのだろう?
病院のベッドも、戸野先輩も湯浅先輩も悠介も、いつもとなにも変わってはいないのに。