ジュエリーボックス


──"私達の記憶は時間に作られている"。



「おばさん仕事があるから、私達が代わりに付き添ってたのよ」

「そうなんだ…ありがとうございます、先輩」

「やだ、眼留ったら。なんでそんなに他人行儀なの?」

「そうそう、俺達の"チーム宇宙"の絆が泣くぞ」


…"チーム宇宙"。

懐かしい響きだ。

戸野先輩に、クラスメイトの藍川くんの顔が一瞬だけ被って見えて驚く。

家は隣同士だけどろくに喋った事もないし、接点なんてないのに。


『気づいて』


響く声は、私の声なのか、私の声じゃないのか、もう解らない。


戸野先輩と湯浅先輩の顔が、いつもより優しく見える。

絵画の中に描かれたように綺麗な笑顔。

悠介が、口元を釣り上げて機械的に笑う。

もしかしたら、今の私も"造り笑顔"をしているんじゃないかと思ったけど、それが自然に思えた。



──"私達は、時空の歪みの渦の中で生かされている"。





「ねえ、愛瀬さんって子、いるようないないような…不思議な子だよね。ちょっと怖い」

「藍川頼人も引き込もり状態なんだって?」

「あの二人、家が隣だったんだけどお父さんが亡くなって…藍川くん、引っ越すらしいよ」

「へー、何処に引っ越すのかな」

「──どこか遠いところに行く、って言ってたらしいよ」





< 62 / 69 >

この作品をシェア

pagetop