ジュエリーボックス
──"私達の記憶は時間に作られている"。
「おばさん仕事があるから、私達が代わりに付き添ってたのよ」
「そうなんだ…ありがとうございます、先輩」
「やだ、眼留ったら。なんでそんなに他人行儀なの?」
「そうそう、俺達の"チーム宇宙"の絆が泣くぞ」
…"チーム宇宙"。
懐かしい響きだ。
戸野先輩に、クラスメイトの藍川くんの顔が一瞬だけ被って見えて驚く。
家は隣同士だけどろくに喋った事もないし、接点なんてないのに。
『気づいて』
響く声は、私の声なのか、私の声じゃないのか、もう解らない。
戸野先輩と湯浅先輩の顔が、いつもより優しく見える。
絵画の中に描かれたように綺麗な笑顔。
悠介が、口元を釣り上げて機械的に笑う。
もしかしたら、今の私も"造り笑顔"をしているんじゃないかと思ったけど、それが自然に思えた。
──"私達は、時空の歪みの渦の中で生かされている"。
「ねえ、愛瀬さんって子、いるようないないような…不思議な子だよね。ちょっと怖い」
「藍川頼人も引き込もり状態なんだって?」
「あの二人、家が隣だったんだけどお父さんが亡くなって…藍川くん、引っ越すらしいよ」
「へー、何処に引っ越すのかな」
「──どこか遠いところに行く、って言ってたらしいよ」