ジュエリーボックス
雨の日の記憶を思い出す度に嬉しくて悲しくて、どうしようもない程にどうしたらいいのか解らなくなる。
『美月さんの方がいいんでしょ、今の頼人には似合ってるよ』
『私はただの幼なじみだから』
『…なんで、私の探してる頼人に会えないの?』
『"反地球"なんてある訳ないじゃん』
『藍川くんと話した事もないのに…どうしてだろう、知ってる気がする』
…これは、いつの記憶?
混ざって、螺旋やマーブル模様、万華鏡のようにぱらぱらと移り変わる日々と季節。
『頼人のバーカ』
『ねえ、本当に"反地球"があるんだよ、信じて!』
『私、忘れるのが怖い』
『頼人も美月も悠介も、みんないなくなっちゃった』
『"私の会いたい人達"がばらばらになってしまって』
…嫌だ、忘れたくない。
私は、四人でいた"あの世界"に戻りたいのに。
何処からか、呼ぶ声がした。
悠介と美月。
私の大切な親友。
頼人。
私の、大好きだった人。
「──…さよなら、だな」
悠介が言った。
「バイバイ、楽しかったよ」
美月が言った。
「…俺達、もう──」
頼人が、くしゃくしゃの顔で泣きながら言った。
みんな、泣いていた。
思い出が壊れる音がした。