ジュエリーボックス



雨の日の記憶を思い出す度に嬉しくて悲しくて、どうしようもない程にどうしたらいいのか解らなくなる。



『美月さんの方がいいんでしょ、今の頼人には似合ってるよ』


『私はただの幼なじみだから』


『…なんで、私の探してる頼人に会えないの?』


『"反地球"なんてある訳ないじゃん』


『藍川くんと話した事もないのに…どうしてだろう、知ってる気がする』





…これは、いつの記憶?





混ざって、螺旋やマーブル模様、万華鏡のようにぱらぱらと移り変わる日々と季節。





『頼人のバーカ』


『ねえ、本当に"反地球"があるんだよ、信じて!』


『私、忘れるのが怖い』


『頼人も美月も悠介も、みんないなくなっちゃった』


『"私の会いたい人達"がばらばらになってしまって』





…嫌だ、忘れたくない。



私は、四人でいた"あの世界"に戻りたいのに。




何処からか、呼ぶ声がした。



悠介と美月。


私の大切な親友。



頼人。


私の、大好きだった人。




「──…さよなら、だな」



悠介が言った。




「バイバイ、楽しかったよ」



美月が言った。





「…俺達、もう──」



頼人が、くしゃくしゃの顔で泣きながら言った。


みんな、泣いていた。




思い出が壊れる音がした。






< 63 / 69 >

この作品をシェア

pagetop