アニキのトモダチは王子様
だから。
きっと、私が井坂さんの妹役をするっていうことは、井坂さんにとってとても大切なことなんだ。
そう思ったのに。

「瑠海ちゃん、マコトから何も聞いてないんだ」
「え?」
「あいつ、自分勝手すぎるな」

呟いて、井坂さんが、私を見る。
優しい目。

「瑠海ちゃん、あんまり気にしなくていいよ。俺は瑠海ちゃんにも、マコトにも、迷惑をかけるつもりはないから」

どうしよう。
井坂さんの目が、あんまり優しいから。
私、耳まで真っ赤になってる、きっと。

井坂さんのこと、何にも知らないはずなのに。
でもやっぱり、かっこいい。

「瑠海ちゃん?」
「は、はいっ!」
「大丈夫?顔が赤いけど」
「大丈夫です!すみませんっ」

やっぱりばれちゃった。
はずかしいよう。
ほら、井坂さんが笑ってる。

「瑠海ちゃんって、ほんと、正直だなぁ」
「すみません」
「かわいいよね」

え?

「おい、ケイ。るぅのこと口説くなよ」

私の後ろから、アニキの声。
机の上にハンバーガーや飲み物の乗ったトレイを置いて、アニキが井坂さんの隣に座る。

「わかってるよ。今のは、正直に言っただけだって。かわいいと思うのは、自由だろ」
「まぁ、妹としてならな」
「それよりマコト、おまえ、ぜんぜん瑠海ちゃんに説明してないんだろ」
「それは、俺が言っていいことじゃないだろ。おまえが、るぅに協力してもらうって決めたら、おまえから言えよ。ケイ」

アニキに言われて。
井坂さんが、ため息をつく。

「……なぁ、マコト。俺はできるなら、だれも巻き込みたくない。おまえもだ。これは、俺だけの問題だ」
「そうやって、俺の前から黙って消えることだけは、二度とさせないからな」
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