アニキのトモダチは王子様
アニキが、井坂さんを見つめる。
まっすぐで、真剣な目。
井坂さんが、また、ため息をつく。

「おまえは、ずるい」
「なにがだよ。友達の力になりたいってのは、そんなにわがままかよ」

アニキの言葉に。
井坂さんが、笑う。
まるで泣き出しそうな、笑顔。

「わかった。三日後に、話す」
「おい、ケイ、それじゃ」
「月が欠けたタイミングがいい。大丈夫だ、マコト。その間くらい、なんとかしてみせる」

なんのことだか、全然わからない。
わからないけど、ひとつだけ、わかる。
私の存在が、井坂さんの助けになる。
それも、むしろ三日後ではなく、今すぐからのほうが。

「私なら、いいよ」
「……え?」
「アニキと、井坂さんの言うとおりにする。ふざけてたり、遊びじゃないんだって、わかったから。役に立てるなら、私にできることなら、理由なんていらない。妹になれっていうなら、なるよ」

私が言うと。
アニキも、井坂さんも、驚いたように見ている。

「瑠海ちゃん、でも、君は何にも知らない」
「知らなくても。井坂さんと、アニキにとって大切なことなんでしょ?私は、それだけでいいよ」
「……ありがとう」

でも。
いったい何をしたらいいんだろう。

「そしたら、るぅ。さっそくだけど、おまえ今日から、ケイの家に行ってもらうからな」
「え?」
「ケイのそばに、いてくれ。まぁ、学校にいる間は仕方ないけど、俺が一緒にいない間は、ケイと一緒にいてほしいんだ」
「えええっ?」
「マコト、それじゃ瑠海ちゃん、意味わからないって」

いや、そんな、意味とかそういうことじゃなくて。
王子様な井坂さんと、一緒に暮らすってこと?
それって、なんだか、大変なことになりそうな。



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