シークレット・ガーデン


ぶつけどころのない怒りを聴いてもらいたくて、司にメールを打つ。


さすがに、あの最中に司の名前を呟いてしまったことは書けなかった。

1番の原因を知らせることなく憤りのメールを打つのは、相手に失礼かもしれないけれど。


何度も文章を書き直したり消したりして、やっと送信した後、真彩はふうーっと溜め息を吐いた。


司はどんな返信を送ってくるだろうか。

悪く言ってしまえば、事なかれ主義の司のことだから、一番容易で、万事丸く収まる方法を提案してくるだろう。


『家に帰りな』と。


午後3時。

フードコートにある二人掛けのテーブル席に座り、大きなガラス越しにぼんやりと外を眺める。


まだ梅雨は開け切っていなくて、暗い雲からは、今にも雨が降り出しそうだ。


理亜とママバッグを抱え、飛び出すみたいにして家を出たのは、午前9時前のことだった。

開店少し前からショッピングセンターの中を歩き回っていた真彩は、すっかり疲れ切ってしまっていた。






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