シークレット・ガーデン


しかも、昨夜はほとんど眠っていない。


更にさっき、ココアとハンバーガーを買った時、財布の中を見て、真彩はすっかり憂鬱になってしまった。


札入れには千円札が1枚だけしか入ってなかった。
小銭は10円玉と1円玉ばかり。

クレジットカードはあるからいいか…と思ったのも束の間で、期限切れだったことを思い出す。

新しいものが書留で送られてきていたのに、差し替えるのをすっかり忘れていた。


(せめて、車のキーでも持っていればなあ…)

困り果てた真彩は思う。


実家には帰りたくなかったけれど、結局そうするしかなかった。









電車に乗り、真彩が実家に辿り着いたのは、ちょうど夕飯時だった。


1年前から、藤沢の実家の夕飯の時間はとても早くなった。

嘱託で定年後も同じ会社で働く父が、午後6時前には帰宅するようになったからだ。

父と母、揃って6時のニュースが始まると同時に食べ始める。


その為、母は
『お友達とお芝居観に行ったり出来なくなっちゃったのよ〜留守にしていると、お父さん、なんとなく不機嫌で』
とよく嘆いていた。



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