シークレット・ガーデン
心配かけたくなかった。
「光俊が帰ってくるから、私、そろそろ帰るね。ごちそうさま!」
そう言って真彩が立ち上がったのは、午後7時半を少し回った頃だった。
「お父さんが帰ってきたら、車で送ってあげるわよ。電車なんか大変じゃない。ねえ、理亜ちゃん」
母は理亜のぷくぷくした頬っぺたを撫でて言ったけれど、真彩は「待てないなあ」と笑って断った。
「なら、少しだけど、光俊君に持って行きなさいよ」
揚げたてのコロッケをタッパーに詰めて持たせようとする。
いつもなら大歓迎だけれど、今日は違う。
そんなものもらっても困る、と真彩は思う。
今だに光俊からはなんの連絡もない。
帰る気なんかなかった。
「夕飯には、冷凍しておいたハンバーグ種を焼くつもりだし、昨日、筑前煮を作り過ぎちゃって残っているから、いらない」
「そうなの…」
母は残念そうな顔をした。