シークレット・ガーデン
「また来るね。お母さんもうちに遊びに来てよ。
あの2人に挟まってたら、気がおかしくなっちゃう」
玄関を出ようとする真彩を母は「ねえ」と呼び止めた。
「何?」
「光俊くんとは…うまくいってる?」
母の問いに真彩は、一瞬、涙が出そうになったが堪えた。
「うん。すごく大事にしてもらってるよ。ちょっと頑固なところはあるけどね」
明るく笑顔を言って、ドアを閉めた。
外へ出ると真っ暗だった。
とりあえず、小田急線に乗り、JR藤沢駅に向かう。
帰る気なんかないのに………行くところがないから、自然に足が家の方向に向かっている気がして、真彩は苦笑した。
電車の中は、通勤帰りの人々で空席はなかった。
吊り輪につかまり、電車の暗いガラス窓に写った自分の姿を見る。
平日のこんな時間に赤ちゃんを連れているのなんか、自分だけだ。
理亜を前に括り付けた格好はまるで、カンガルーの親子のようだと思う。