シークレット・ガーデン


「また来るね。お母さんもうちに遊びに来てよ。
あの2人に挟まってたら、気がおかしくなっちゃう」


玄関を出ようとする真彩を母は「ねえ」と呼び止めた。


「何?」


「光俊くんとは…うまくいってる?」



母の問いに真彩は、一瞬、涙が出そうになったが堪えた。


「うん。すごく大事にしてもらってるよ。ちょっと頑固なところはあるけどね」


明るく笑顔を言って、ドアを閉めた。



外へ出ると真っ暗だった。

とりあえず、小田急線に乗り、JR藤沢駅に向かう。



帰る気なんかないのに………行くところがないから、自然に足が家の方向に向かっている気がして、真彩は苦笑した。


電車の中は、通勤帰りの人々で空席はなかった。


吊り輪につかまり、電車の暗いガラス窓に写った自分の姿を見る。


平日のこんな時間に赤ちゃんを連れているのなんか、自分だけだ。


理亜を前に括り付けた格好はまるで、カンガルーの親子のようだと思う。







< 111 / 216 >

この作品をシェア

pagetop