シークレット・ガーデン
やっと司が自分の目を見てくれた、と真彩は安堵した。
「はい!」
司が茶色くて丸い揚げ菓子がいくつか入った黒い菓子鉢を、真彩の目の前に置いた。
「あっ、これあれでしょ?」
真彩はそれを指差す。
喉まで出掛かってるのだけれど、
名前が出てこない。
司が笑いながら言う。
「サーターアンダギー。
宮古の母親の手作り。
土産にってたくさん持ってきてくれてさ。たまにガチですごい量送ってくる。
離島で送料高いし、こっちでも売ってるからいいっていうのに、渚に食わしてやれって」
「分かる分かる〜うちのお姑さんも同じ!」
光俊の母もしょっ中、真彩達に薩摩揚げを送ってくれる。
そして、光俊も司と同じような事を言う。
薩摩揚げなんて、こっちでいくらでも売っているんだから、送らなくていい、と宅配便が来る度に電話で伝える。
でも、やっぱり届く。
母親というものは、息子がいくつになっても好物を届けなくては気が済まないのだろう。
「そうそう。サーターアンダギーだよね。私大好きなの。ありがとう。
授乳してるでしょ?すっごくお腹空くの。1つ頂くね」