シークレット・ガーデン
(‥…私…夢を見た……)
後部座席からハンドルを握る司の長い指の手を見て、真彩は思い出す。
それは、明け方見た夢だ。
甘い匂いの立ち込める小さな花園。
夢なのに、真彩の鼻はしっかりと花の香りを嗅ぎ、湿った空気を感じた。
赤や黄のハイビスカス、濃いピンク色のブーゲンビリア。
情熱な色とりどりの南国の花が咲き乱れている小さな楽園。
熱を帯びた風に椰子の葉が揺れ、パパイヤの青く固い実がざわめく。
真彩はベンチに座っていた。膝には理亜がいる。
傍らには司が寄り添い、真彩の肩を抱く。
そして、真彩と司の前では、首から鮮やかな赤いレイを掛けた渚がはしゃいでいた。
一ーワンシーンだけの幸せで暖かな夢。
……その夢に光俊は出てこなかった。
光俊は抹殺されていた。
夢から目覚めた時、真彩の心は苦しくなった。
(心の中を願望を映し出す夢を見たんだ…)
真彩は思った。
改めて、自分の罪深さに気が付いた。
理亜が泣き出すまで、もう眠りに付くことが出来なかった。
(もう、夢からは抜けださなきゃ……
光俊と一緒に札幌に行き、家族3人で暮らそう……)
天井の円いペンダントライトを見ながらそう結論を出すと、心が軽くなった。