シークレット・ガーデン
ステップワゴンは藤沢駅のロータリーへと入った。
司は素早く車を降りて、真彩が後部座席から降りるのを、ドアの外で待つ。
「気を付けて」
ママバッグを持ってくれた。
「うん。ありがとう。司。
渚ちゃんとも逢えたし、すっごく楽しかった!」
前抱っこした理亜の背中をさすってやりながら、真彩は司の顔を見上げてにっこりとする。
ーーこれきり、もう二度と逢うことはないかもしれない……
そう思いながら。
車の中から渚は、盛んに何か言いながら、手を振っていた。
窓が締まっていて、声は聞こえないが、真彩はそれに応えて手を振る。
「…あのね」
真彩は司に向き合った。
「実は私、秋に旦那について札幌に引っ越すの。転勤の内示が出ちゃって」
「……えっ、マジ?」
ジーンズの両ポケットに指を掛けた格好で司は目を丸くした。
「札幌かあ。すげえ北と南だね。
寒いんだろうな」
「…もうひとつ言うとね…
旦那との喧嘩の原因は、エッチしてる時、間違えて司の名前を呼んじゃったからなんだ…
それなのに謝りもしない私。
ひどい妻でしょ?」