シークレット・ガーデン


司の囁きに、真彩は理亜の背に手をやったまま、魔法にかかったように動けなくなる。


理亜が、あう〜……と可愛い喃語をあげ、不思議そうな顔をして真彩を見上げる。



「じゃあ…な。気を付けて帰れよ」


司は片手を高く上げ、くるりと踵を返し、愛車のフロントに回り込んだ。



行っちゃった……


真彩が思った時、司は身を翻し、再び車の影から顔を出した。

右手を口元に当て、叫ぶように言う。



「その時、宮古島に行く準備しとけよ!」


真彩はにっこりと微笑み、手を振った。

そして、小さな声で呟いた。




…行けたらね……



吹き抜ける風に初夏の潮の匂いを感じた。



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