シークレット・ガーデン
一昨日、夫の光俊と娘の理亜と3人で、上京した。
札幌はやっと道端の雪が溶けたというのに、こちらは満開の桜が、花びらを落とし始めていた。
「同じ日本なのに、こんなに違うんだな‥」と感心する光俊に真彩は、
「でも、こっちの方が寒いみたい」と胸を抱えてみせた。
真彩が札幌で生活するようになって驚いたのは、住んでいるマンションにしても、駅地下にしても屋根のある場所に入った途端、とても温かい、ということだ。
どこへ行っても、隅々まで暖房が行き届いているおかげだ。
雪が降っているのに、街ゆく人々がそんなに厚着でないのは、札幌の暖房設備がすごく充実しているからだ、と新しく出来たママ友が教えてくれた。
正月休みに、札幌に引っ越してから初めての里帰りをするつもりだったのに、出発前日に理亜が高熱を出して、泣く泣く飛行機をキャンセルする羽目になった。
孫を抱っこするのを楽しみにしていた真彩の両親の落胆ぶりが可哀想で、早く帰りたかったのだけれど、光俊の仕事のタイミングを見計らっているうちに春になってしまった。