シークレット・ガーデン


なんと、箸が滑って海老しんじょを落っことしてしまったの!

コロコロとテーブルの真ん中を転がっていく黄色い物体に場の空気が固まったわ……


するとね。
彼が自分の汁椀の蓋をさっと開けて言ったの。

『優美子さん、僕のをどうぞ!』って。


戸惑ったよ〜だって初対面じゃない。

でもね
『こんな美味そうなもの、僕だけ食べることは出来ないですから』って真剣な目をしていうから、私、可笑しくなっちゃって。

半分こしたの。結局。

うちの親もすごく彼のこと、気に入っちゃって。


海老しんじょが私たちのキューピットになってくれたなんて、本当笑っちゃう…」


頬を薔薇色に染め、幸せ一杯の優美子に真彩はついつい見惚れてしまう。


優美子が髪を短く切ったのは、3日まえのことで、こんなにふうに首筋を出すのは、小学生以来だという。


艶やかな栗色のヘアカラーに、ランダムに付けられた毛先のカール。

日常的に炊事をするようになった指先には、パール一色のネイルが施され、それが新妻らしく初々しかった。


そして、まだ指に馴染んでいないダイヤの並んだ銀色のリング。



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