シークレット・ガーデン


「そういえば、ホームページに、この階にある催事場で蘭の展覧会してるって出てたな……
無料みたいだから、ちょっと寄ってみない?」


南国から帰ってきたばかりの優美子は、トロピカルな雰囲気が恋しいらしかった。


「うん。エステは2時からだし、ショップはランチのあとにして、蘭、先に見にいこうか」


[第5回オーキッド・フェスティバル]と書かれた案内板のあるバンケットルームに入ると、むせ返るほどの甘い花の香りが押し寄せてきた。



黄、白、ピンク、オレンジ……


真彩と優美子は、華やかな色彩の洪水に思わず息を飲んだ。


……ここは春でも夏でもない。


季節のない幽玄の世界。


その名の通り、美しい蝶が連なっているかのような可憐な胡蝶蘭。


まるで芸術品のような繊細なフリルを持つ大輪のカトレア。

主役達をさらに盛り上げる為に隙間なく置かれたデンファレは、花の織物のようだ。



日本各地の蘭愛好家や栽培農家が、手塩にかけて育てた自慢の蘭をここで競わせる。




< 174 / 216 >

この作品をシェア

pagetop