シークレット・ガーデン
会場では、邪魔になってしまうので、3人は少し移動して廊下に出た。
大きな窓から入る陽光は、司の男振りをさらに際立たせる。
変わったのは、口髭だけではなかった。
濃い眉はそのままだけれど日焼けのせいか、さらに精悍な顔付きになった。
さっきのアロハシャツを着た中年男性は司の叔父で、砂川フルーツ・ガーデンの社長。
司は専務の肩書をもらっている、という。
「昨日、この展示会の為に上京したんだ。おじさん、飛行機が大嫌いなんだ。
1人で行きたくねえって大騒ぎするから、パークは人に任せてきたよ」
司の口調は明瞭だが、優美子の方ばかり見ていて、真彩の方を見ようとしない。
でも、真彩は気にしない。
意識し過ぎてそうなるのは、司の昔からの癖だと知っているから。
「あれ?渚ちゃんは、来なかったの?
今年、小学校だよね?」
真彩の問いに、司はやっと真彩の目を見た。
「うん。渚も来てるよ。
1年生になったばっかだけど、せっかくの機会だから、休ませた。
今日は知り合いがディズニーランドに連れて行ってくれているんだ。
日帰りでね。花火まで見てくるからって言ってたから、帰りは遅くなると思う……
ところで真彩、札幌に引っ越したんじゃなかったっけ?」