シークレット・ガーデン
「あそこにしないか?うどんなら食えるだろ?」
信号待ちで司は、左手に見える『釜揚げうどん』と大書した看板を指差した。
少し前まで、宮古島の東平安名岬(ひがしへんなざき)には、たくさんの鉄砲百合が咲いていた、と司は言った。
「ほら」
食べ終わったうどんの器をはじに寄せて、司は自分のスマホを真彩の方に突き出した。
画面には、咲き乱れる百合をバックに、ピースサインをする渚が写っていた。
「可愛い!ちょっと見ないうちにお姉ちゃんになったねえ。
ますます司に似てきてるみたい」
「ますます生意気になってきたよ」
司は唇を歪めてみせた。
こんなにも、司との会話は馴染むのに。
なぜ別れたんだろう……
原因が明確でないだけに、今、司とこんなに自然体で付き合えることが不思議だった。
司は、レジで当たり前のように真彩の食事代も支払ってくれた。
真彩も財布を出そうとすると、ちょっと眉を顰め、小さく首を振って。