シークレット・ガーデン
「俺…ひどい父親かもな……
だけど、渚を取られそうで怖いんだ。
渚は女の子だから、どうしたって女親の方がいいに決まってるだろ……
どんな母親でもさ。
これから大きくなるにつれて、身体も変化するし…そういうの俺、よくわかんねえから」
しきりに右手の人差し指で、鼻の下の髭をこする。
司の漆黒の瞳は、わずかに潤んでいた。
その様子が切なくなって、真彩は語気を強める。
…絶対にひどい父親なんかじゃない。
「いいの!司がパパなんだから。
元奥さんはもうただの傍観者じゃない。
かき乱されることはないよ。
事実は渚がもう少し大きくなってから言えばいい。
司が話したくないなら、無理に話すことなんてない……
すごくデリケートな問題だけど…」
言いながら、真彩は渚の感受性の強そうな眼差しを思い出す。
あの子は、大人達が思うより分かっているのかもしれない……
…今日一日、テーマパークで遊んでくれた女性のことを。
もしかしたら、自分のママかもしれないという思いを小さな胸に抱えて過ごしている気がした。
「….そうだな。真彩。頑張るよ。ありがとう」
司は少し寂しげに笑った。