シークレット・ガーデン
やっぱり夫は……懲りていません
2年後。
「あ、何これ?すげえキレイじゃん」
レースカーテンの出窓に置かれた、白いカトレアの鉢を見つけた光俊が言った。
会社から帰ってきたばかりの夫がブルーグレイの作業服の上っ張りを脱ぎつつ、足踏みをするようにして靴下も脱ぐ、という離れ技をみせるのは毎日のことだ。
花になど興味ないはずなのに、光俊は白い花びらに顔を近付け、匂いを嗅ぐようにした。
「ユリなの?それともチューリップ?」
光俊の乱暴な質問に真彩は、持っていたコップを落としそうになった。
「カトレアよ。彩(さい)っていう品種。知り合いに頂いたの。素敵でしょう」
真彩が笑いながら答えると光俊も
「百合ならもっと長えよな」と笑いながら言った。
以前の光俊なら、
『花の名前なんか知るかよ』とムッとした顔をみせるところなのに。