シークレット・ガーデン


3ヶ月前。ここへ引っ越してきたばかりの頃。

真彩は流産をしてしまったのだ。


初めての悲しい経験だった。


つわりらしき症状があったので、妊娠検査薬を使うと陽性反応が出た。



ーーやったあ!真彩、でかした!


体を冷やすなとかコーヒーを飲めとか。

酢の物を食って体質をアルカリ性にしろだとか。

どこで集めてきたかわからない情報で、真彩を生活指導(?)をするほど光俊は、子供欲しがっていたから、その喜びようは半端じゃなかった。


光俊は真彩以上に喜んでくれたのに、それは束の間だった。


鹿児島と藤沢の実家にも『2人目が出来たよ』と早速、電話で知らせたというのに。


その3日後の朝、真彩が起きると、大量の出血が始まってしまった。


慌てて、光俊の車で病院に行ったものの、打つ手はなかった。



ーー湯船のお湯が熱かったせいかな?…


流産の後処置が済んだ後、真彩が放った何気ない一言が、夫を激しく傷付けてしまった。


前の晩、風呂を沸かしたのは、光俊だった。



ーー真彩、本当にごめんなさい……
俺の不注意のせいで……


責任を感じた光俊は、家に着くなり土下座して謝った。


避けようがない初期流産で、不注意でダメにしてしまったわけでもなく、ましてや誰かのせいでもないのに。



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