シークレット・ガーデン
声を掛けてきた時、司は背中を少し丸め、屈むように話しかけてきたけれど、ものすごく圧迫感があった。
脚もとても長い。
切れ長の目で、顎の線がシャープな司は人々が集うビーチでもひときわ目立っていた。
後から彼の身長は192センチもあると知った。
『バスケとかバレーやってたでしょ?
って絶対言われる。
中学では野球部。高校ではテニスしてた』
司は綺麗な白い歯を見せて、真彩に言った。
はっきりとした理由があって別れたわけじゃなかった。
関係が冷えたのは、大学を卒業した司が、わずか1年半で就職先の文具メーカーを突然辞めてしまった事が発端だった。
辞める理由もまともに言わない司に、真彩は深く失望した。
誰もが知っている有名なメーカーで、給料も待遇もそんなに悪くなかったのに。
司は開発に携わる部署にいたので、プレッシャーは常に抱えていた。
それだって、自分次第でやり甲斐のある仕事に変えられるはずだ。
たった1年半で辞めてしまうなんて…
どんな会社だって、どんな仕事だって
続けることに意義がある。
真彩はそう思った。